ラブホテル研究家 鬼束ちなつ

【ラブホテル研究の軌跡ブログ3】 ラブホテル研究の先駆者に会いに行く(中編)

こんにちは。ラブホテル研究家の鬼束ちなつです。3つ目の記事になるラブホテル研究の軌跡ブログですが、私的な内容ばかりなので、果たして私以外が読んで面白いのか少し不安になってきてます。
しかし、これは半分自分のためにやってることでもあるので、できる限り続けてみようと思います。10年越しに書く日記みたいなものです。
さて今日は、ラブホテル研究の先駆者である金さんにお会いしに行く話(https://onizka-chinatsu.com/blogs/blog-002/)の続きをしたいと思います。

(前回までのあらすじ)
2008年冬、しがない建築学生だった鬼束はラブホテル研究を始めると決意するが行動に移せないでいた。その頃、ラブホテル巡りを趣味としている友人Mと偶然出会い、共に行動を始める。友人Mは溢れる行動力で、金さん所属する大学へ勢いよくアポイントを取るが、返事の無いまま数日が過ぎていた。
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これはきっとダメだったんだろうなと二人して諦めかけていたその時、金さんへ伝えていたMのメールアドレスに一通のメールが入った。

「会ってお話しましょう。神戸まで来れますか?」
金さん本人からのメールだった。
ほぼ諦めていたのもあり、あまりの嬉しさに私達は教室の片隅で小躍りした。
一通り躍りを楽しんだ後、お会いできる日時と場所について金さんとやりとりをし、無事にヒアリングへ伺えることが正式に決定した。
やった…!私にラブホテルの面白さを教えてくれた、あの金さんに会えるぞ…!
私達は休むことなく、すぐに神戸への旅の準備を始めた。

二人で一つのPCを見ながら高速バスやホテルの予約をしている時、Mがふとつぶやいた。
「せっかく関西行くなら、いくつかラブホ見て回りたいな。都築さんの本に載ってる関西のラブホとか見てみたくない?」

都築響一さんの著書「ラブホテル-Satellite of LOVE」の表紙。とてもグッときますね。
この表紙に使われているホテル、研究を始めた時には既に解体されていて凄く落ち込んだ覚えがあります。

都築さんの本とは、「ラブホテル−Satellite of LOVE」という写真集のことである。ちょうどこの頃は新装版が発行されたばかりの時期で、この写真集と金さんの「ラブホテル進化論」の2冊は書店でも目立っていたため、即購入し、Mと読み回していた。
確かに。せっかく遠出をするのだから、色々見て回りたいぞ。しかし、当時お小遣い程度のバイト代しか手元に無かった私には何軒もラブホテルに行くような余裕はなかった。Mは2歳も年上で家も裕福そうだから、そのぐらい余裕なのかもしれないけど…と思いつつ、正直に相談した。

「確かに私も色々見て回りたいけど、正直お金が無いよ。神戸を往復するだけでもいっぱいいっぱいだし。」
自ら金さんに会いに行きたいなんて言ったくせに申し訳ないな、と思いつつMの方に目をやると、Mはきょとんとした顔をしていた。
「え?私もお金ないよ?だけど、大学生がラブホの研究してるってアポとれば、休憩とかしなくても空いてる部屋見せてくれるんじゃない?ていうか、普通にお金払って全部見てたら、破産するでしょ!」
確かに破産するよな。思わず納得してしまったが、Mだって二十歳そこそこの学生なのに、何故こんなにも面識の無い人へアポイントを取ることに躊躇がないのか不思議だった。彼女には恐れというものがないのか。

「確かに、それならお金掛からなくて済むかもね。でも、ラブホテルの人ってそんな学生とかに優しいのかな…。」と私はまた不安を吐露した。
その時私はラブホテルという「建築物」自体には非常にポジティブに興味を持っていたものの、そこで「働いている人」に対しては未だ偏見があった。きっとアウトローな人達が殆どなのではないか、だから急に変な電話とかしたら冷やかしと思われて怒られるんじゃ、そう思っていた。
できるだけ恐い思いはしたくない。私は完全にビビっていた。
それに対してMは、
「まあ聞いてみなきゃ分かんないじゃん!」
と言い放ち、おもむろにMが都築さんの本の中でお気に入りにしていたホテルの一つ「ホテル富貴」へ電話を掛け始めた。この子の恐れのなさと、ラブホテルという施設への壁の無さはなんだ。逆にMのことが恐くなってきた。

数分の会話を終え、電話を切ったMは、
「他のお客さんの邪魔にならなければ、見学して良いってー!」
と明るく言った。良かった、ホテルの人は恐い人では無いみたいだ。
Mの謎の行動力はもはや恐ろしいが、彼女に勇気を出して話しかけて良かったと改めて思った。

こうして、私達の神戸行きは決まった。
夜行バスで大阪へ行き、到着したその日にホテル富貴を見学、空いた時間で大阪観光をしつつ、夜は比較的安価で同性同士がOKなラブホテルへ宿泊。次の日すぐに神戸へ移動し、昼に金さんへのヒアリング、夜にはもう高速バスへ乗り東京へ戻る、という貧乏学生らしい弾丸スケジュールになった。
この旅が、私のラブホテル研究の大きなスタートだった。

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またまた長くなってしまったので、一旦区切ります。
後編からは、関西のラブホテルがたくさん出てくる予定です。

【本日の一枚】
この旅でMと宿泊したラブホテル「ホテルパブリックジャム」の一室。後ろ半分が切られている自動車が置かれた、ちょっとシュールなお部屋です。
この部屋を見るといつも、「自動車が前後半分じゃなくて、左右半分に切られてたら、椎名林檎の『罪と罰』のPVごっこができたのになあ。」と思ってしまいます。