ラブホテル研究家 鬼束ちなつ

【ラブホテル研究の軌跡ブログ1】大学1年の夏、ラブホテルに恋をした。

こんにちは、ラブホテル研究家の鬼束ちなつです。はじめましてな方も多くいらっしゃるかもしれません。
その名の通り、ラブホテルを研究しています。
また可笑しな肩書きを自称する奴が現れたなと思われていそうですが、意外と真面目にやっています。

取材中の自分の写真があまり無く、偶然出てきた写真が「清掃中」の部屋を取材した時のものでした。
ベッドの異様な乱れはそういうことなので、気になさらないでください。

こんな感じでラブホテルでのフィールドワークを中心とした活動をしており、そこで記録した写真は書籍や自分のwebサイトで公開をしています。(書籍買ってください、お願いします…!)
こういった活動を通して、ラブホテルの空間特性や周辺地域との関係性などを研究しています。
大学在学中の2008年にこの研究を始め、現在も建築関係の会社でデザイナーとして働きつつ、ライフワークとしてラブホテルの研究を続けています。

さて、長くそんな活動をしていると必ず聞かれるのが、「なんでラブホテルに興味をもったの?」とか「ラブホテル研究って何をしてるの?」といった質問です。確かに、急にラブホテル研究家を自称する人間が現れたら、誰もが思うでしょう。私もそう思います。
このブログでは、そんな質問にお答えするように、ラブホテル研究の経緯と軌跡を順を追ってお話ししていきたいと思います。

また一方で、こういった活動をしていると、「そういう活動してるってことは、やっぱりHなことが好きなの…?おじさんもね…」と聞いてもいないことを話し始める方にも出会います。ラブホテルという建築の特性上、そのような誤解をされる方も一定数いるだろうと覚悟を決めてずっと活動をしておりますが、いざそういう人を目の前にするとやはり虫唾が走ります。

そういった人を極力減らすという意味でも、きちんとラブホテル研究の詳細を言語化していく必要があると思い、筆を執りました。
しかしそれでも尚、上記のような方に出会うことがあったら、その時は密かに集めている「ラブホテルに据え置かれているロゴ付きライター」で炙ってやろうと思います。

少々冗談が過ぎましたが、まずはラブホテル研究のきっかけについてお話したいと思います。
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遡ること10年と少し前の2008年夏、私は建築デザインを学ぶしがない大学1年生でした。その頃はまだ自分がどんな建築が好きで、どんな空間を作りたいかもよく分かっていない状態で、なんとなく教授の話を真に受けては、それっぽいものを創作する毎日を過ごしておりました。
ただひとつ分かっていたのは、大学の図書室に並ぶ最新の建築雑誌を眺めていても、そこに載っている建築に対してあまり心がときめかない自分がいることだけでした。

ある日の夜、いつものように大学から帰宅し、ソファに横たわって何をするわけでもなくぼんやりとしていました。その時ふと、母が定期購読していたテレビブロスというテレビ雑誌が目に入り、(あれをテレビ雑誌と言うべきかは微妙なところですが。)何気なくそれをパラパラと読んでいると、とあるページに行き着きました。

きっかけとなったテレビブロス。
今では大ブレイク中の6つ子が、この時は端っこに追いやられてますね。
テンションのやたら高い見出しです。

「ラブホテル a GOGO!」
…なぜテレビ雑誌でこの特集を?
しかし、とりあえず読み進めます。
その記事が自分の将来に大きな影響を与えるとも知らずに…。

ところで、私はラブホテルの多い街で生まれ育ちました。実家の最寄り駅近くにはラブホテル街があり、ほぼ毎日当たり前のようにその横を通っていました。また実家のそばのインターチェンジにもラブホテルが林立し、私のふるさとを煌々と照らしていました。
そのためラブホテルというのは、生まれた時から非常に身近な存在ではあったものの、ラブホテル街が漂わす独特の空気感から、これはあまり深く関わってはいけない施設なんだろうと思っていました。
もちろん利用したこともなく、建物に一歩足を踏み入れたら何かしらの犯罪に巻き込まれてしまうのでは?と思っていたくらいです。

ふるさとの風景を印象付けていた船の形のラブホテル

そんな当時の私にとって、この特集記事は衝撃以外の何者でもありませんでした。
アミューズメント性が高く、多様性に溢れた客室のデザイン。独特なセンスを持ったホテルのネーミング。性的なことをするためだけに発明された可笑しなベッドや設備。
それらは最新の建築雑誌には決して載っていないものばかりで、その全てが私の心をときめかせました。

大学の図書室でワクワクすることができなかった私が、その時心の底からワクワクしました。この時の心の高まりは今でも上手く言葉にすることはできません。強いて例えるなら、「出会った時には無愛想で生意気だと思っていたクラスメイトの男子を、ふとしたことがきっかけに徐々に好きになっていく少女マンガの主人公の心情」に近いかもしれません。まあ、すなわち恋なのでしょうね。

自分の家の周りにあった、粗悪で穢らしいと思っていた建築がこんなに面白いところだったなんて…。なんで誰も教えてくれなかったんだ…。
でも今からでも遅くない、ラブホテルについてもっと調べてみよう。
しかし2008年当時、私はネットで検索するといった習慣がまだあまり無く、もちろんSNSもやっていなかったので、今のようにすぐに沢山の情報を収集したり、同好の士を見つけたりすることはハードルの高いことでした。

ラブホテルについてもっと知りたいけど、どうしたら良いものか。
特集記事を読み直しながら色々と考えるうち、その中でコラムを書かれていた神戸学院大学の金益見先生のお顔が目に入りました。そして、私はふと考えました。

「この人に、会いに行こう…。」

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まだまだ話は続きますが、なんだかとても長くなりそうなので、これ以降のエピソードはまた後日にします。
ラブホテルはまだ出てこないですが、ブログでは毎回【本日の一枚】として、ラブホテルで撮影した写真を1枚ずつ公開していく予定です。

【本日の一枚】
ラブホテルの落書き帳に書かれていた一説。落書き帳という存在も今やなくなってしまった文化の一つです。
アラサー世代のカリスマである浜崎あゆみの歌詞もラブホテルで読むとなんだか味わいが違いますね。